「俺をからかって楽しかった?」

「えっ…」
彼の言っていることが理解できない。

「二人でさ俺のことからかって楽しかった…?」

もう一度発した彼の声は低く、明らかに怒りを含んでいた。

「藤咲、二人の見分けは方は目元にほくろがあるかないかだって前に俺に教えてくれたよな?
…あるじゃん、藤咲にも菜月ちゃんにも…。

俺が菜月ちゃん好きなの知って二人で入れ替わりながら俺のことからかってたんだろ。

最低だな、お前たち。

もう二度と会うこともないし、もし俺を見かけることがあっても絶対に話しかけるな!」
 
「ちがっ!待って!!」

怒ってお店を出て行く服部くんを追いかけて、すがるように掴んだ腕は、無言で向けられた冷たい瞳に、私はすぐにその手を離すしかなかった。