藤咲がそっと俺の手の下から自分の手を抜きくすりと笑う。

「何言ってるの?

先に出会ってるのは菜月じゃなくて私だよ?」

「あっ…」

藤咲の言葉にはっとする。

「入学の日、同じクラスで隣の席で、私が一番最初に言葉をわしたの服部くんだよ?

覚えてないの?

順番なんてさ関係ないんだよ。

だって私たちが双子なのも知らなかったし、わざと素顔を眼鏡で隠してた菜月が気になってたんでしょ

私じゃなくて菜月が、私よりあとに出会った菜月に服部くんは引かれたんだよ」

にっこり微笑んだ藤咲の笑顔に、俺の心拍数は跳ね上がることは全くなくて…。


昼間頬に触れて顔を赤くしていた彼女を思い出すだけで、俺の心拍数は一気に跳ね上がった。

うん、そうだよな。

藤咲の手を握ってもドキドキしなかったな。

「そうだな。悪い藤咲。

やっぱこっちの藤咲には俺興味もてないや。

俺が気になるのは藤咲姉みたいだ」

もやもやしていた気持ちが一気に晴れて、明日が急に待ち遠しくなった。