「おはようございます」
一年前よりも少し背が伸びたカレが、今日も礼儀正しく私に挨拶をする。

「おはようございます」
私もつられていつも同じように砕けた口調ではなくかしこまって挨拶をし、そのあとは決まって二人顔を見合わせてクスリと笑う。

「随分背が伸びたよね」
そっと柔らかな黒髪に触れてその頭をなでると、カレは口を尖らせ私を見上げる。

「子供扱いしないでください!
これでも僕、成長期の男の子ですよ?すぐに追い越します」

少し不貞腐れたその顔が可愛くて私の頬が思わず緩む。

「僕のほうが大きくなったらお姉さん、僕の彼女にしてあげますからね。
どうせお姉さん彼氏いないでしょ?」

ふんっと鼻で笑われ小学生相手に思わずムキになる。

「むっ!彼氏はいないけど好きな人くらいちゃんといるから!
心配してくれなくても大丈夫だからっ!」

眼鏡に手をかけ深くかけ直しながら大人げなく言い返した。

カレは目を丸くして

「お姉さん女子校なのにそんな人いるの⁉
誰ですか!中学の同級生?
その人と……恋人になれそう…なの?」

なぜか慌ててしょんぼりしたカレが私の制服の裾をぎゅっと掴んた。ヤキモチ…やかれてるのかな…?
弟みたいな可愛らしいカレの仕草と表情に、安心させるように笑顔を向けた。