叶くんと私の声に反応した服部くんがゆっくり振り返る。

「祥平おはよう」

「……」

服部くんの視線が叶くんではなく真っ直ぐに私をとらえた。

目が合った瞬間、微かに微笑んだような…気がした。

「うっす、叶。藤咲、おはよ
う……」

固まったまま動けないでいる私の目の前で大きな手がひらひらしてはっとする。

「藤咲?大丈夫?
動き止まってたけど体調悪いの?
それとも、ジャージ姿の祥平に見とれてた、とか?」

いたずらっぽく笑う叶くんの言葉に、バチっと目が合った服部くんと私はわかりやすくぽんっと二人で赤くなる。

ちょっ、ちょっとまって…!

これじゃ、叶くんに誤解されちゃう!

私は服部くんが好きだけど、美月が好きなのは叶くんなんだからしっかりしなくちゃダメっ!

「ちっちがうから!
変なこと言わないでよ叶くんっ!!

朝の満員電車でちょっと気分悪くなってただけだから!
おっおはよう!服部くんっ!」

たぶん…まだ真っ赤な顔のままであろう必死な形相で服部くんと目を合わせて挨拶をすると、服部くんは目を細めてくすりと笑い

「藤咲、おはよう」

ともう一度挨拶をしてくれて。

嬉しくて今度は満面の笑みで私ももう一度挨拶をした。

「服部くん、おはよう!」と。