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「ふぁぁ、おはよう菜月。もう行くの?」

朝食を終えて歯磨きをしていた洗面台に、起きたばかりの美月が顔を洗いに姿を見せた。

鏡を見ているように同じ顔が正面に現れる。

親も見間違えるほど私と美月は本当によく似ている。

美月は顔を洗うと私の背後に立ち、ブラシで私の髪をときながら高い位置でポニーテールにして緩く髪を軽く巻く。

「はい、出来た!
菜月も少し薄くでいいからお化粧していけばいいのに!可愛いのにもったいないなぁ」

鏡越しに私を見る同じ顔の美月は口を尖らせ可愛く笑う。

「ありがとう、美月。
化粧はいいんだってば!朝練で汗かくからどうせすぐおちちゃうし、女子校なんだから美月みたいに可愛くしていかなくてもいいし」

ぼやぼやしていると美月に化粧までされかねなくて、遮るように黒縁眼鏡をサッとかける。

「あーっ!!
もうその野暮ったい眼鏡いいかげんにやめたら?
部活の時はコンタクトいれてるんでしょ?
朝からコンタクトしていけばいいのに。

ただでさえ女子校なんだよ?

菜月可愛いんだから通学途中で誰かに見初められるかもしれないんだから化粧して眼鏡外して学校行きなよ!」

眼鏡に手を伸ばしかけた美月から逃げるように洗面台からするりと逃げる。

もたもたしている時間はない。
いつもの電車に乗り遅れてしまう。

「ごめん、美月。
電車乗り遅れる!
いつもありがとう。いってきます!」リュックを背負うと自転車に跨り駅へ向かう。

7時発東京行きの前から3両目に乗るために.私は自転車をこぐスピードを上げた。