「うん…いるよ。N女に姉が。
知ってるの菜月のこと」 

「はぁ?
菜月って藤咲の姉ちゃん!?」

"菜月" という名にすぐさま反応してしまった俺は、思わず身を乗り出して藤咲に食いつき、無意識にその名を口にしていた。

「やべっ…」

自分でもわかるくらい一瞬で熱をもった顔はたぶん…赤い。

腕で顔を隠しそっぽを向く瞬間、藤咲の向こう側でニヤニヤしながら俺を見ている叶か視界のすみに入り、そっぽをむく俺の顔を追うようににんまり笑う藤咲がいて。

俺は……。

がっくり項垂れて深い深いため息をついた。