「ただいま」

放課後の部活を終えて帰宅すると、家中に甘い香りが広がっていた。

リビングにはいると、美月が鼻唄を歌いながら得意のお菓子作りをしているところで、ちょうどマドレーヌがたくさん焼き上がったところだった。

「お帰り菜月。食べる?」

差し出された焼きたてのマドレーヌは美味しくて、こういう女子力の高い美月を羨ましく思う。

「明日ね、バスケ部に差し入れしようかとおもって」

「え…」

口の中に広がっていたバターのきいた甘いマドレーヌが一気に味をなくしていく。

どうにか飲み込んだ私の目の前で、美月は少し頬を染めて嬉しそうに笑った。