「あのさぁ…」

少し怒ったような声が聞こえて見上げた祥平くんは、口を尖らせ恨めしそうに私を見下ろしていた。

「菜月、可愛いすぎるんだよ、今日!
浴衣も可愛いし、化粧もしてるし…。
髪の毛も…。まとめて首出してるし、帯でその…胸強調されてるし…。
今すぐキスしてぇの!

我慢してるのに叶のやつ、あっさり触ってるし…。

でも俺、菜月のお母さんと約束したし。

そんなことうっかりしたらさぁ…抑えきかなくなるからさ…たぶん…。

大事にしたいんだ、菜月のこと。

真剣に俺はずっとこの先の未来も一緒に居続けたいんだ。

17の高校生のくせにって思うかも知れないけど、俺はずっとこれから先も菜月だけを想い見続けていたいんだ。
大事にしたいんだ、菜月を、菜月を好きなこのきもちを。

だからさ、あんま煽んないで?」

「毎年。
毎年こうして浴衣を着て、手を繋いで一緒に花火を見てくれますか?」

「ああ、約束だ。
毎年こよう、二人で。
もちろん、誰にも邪魔させない。
子供はじじばばに任せてずっと二人で花火見にこよう」

夜空に大輪の花がひらき、見上げた私の唇にそっと祥平くんの唇が重なった。

「大好きだよ、菜月。
ずっと一緒にいよう。

菜月だけをいつも見てる。
絶対に間違えないし、俺が好きなのは菜月、藤咲菜月だ」

再び重なる唇。
今はまだ神様の前で誓えないけれど私たちは夜空に浮かぶお月さまに愛を誓う。

この想いが永遠に続きますように
…と。






  -完-