✳✳✳

叶から電話がきたのは、家族にからかわれながら夕飯を終えた直後だった。

「こんな時間にごめん祥平」

幸せな気分でいる今、話たくない相手だ。
忘れるっていったくせに、叶が駆け寄って菜月ちゃんを抱きしめた姿は一向に頭の中から消えてくれない。

「何?」

わざとらしく聞いたけどたぶん叶はそのことで電話してきたのだろう。
今は聞きたくないな。

「今から外でてこれないか?
会って話したいんだ」

やっぱりそうか。菜月ちゃんのことだよな…。
ダメ元で聞いてみる。

「明日じゃダメか?」

「今がいいな。今日中にすっきりさせたいんだ」

「はぁ、わかった。今から行くよ」

俺は夕方菜月ちゃんと一緒にいた公園のベンチに再び向かった。
月明かりに照らされたベンチには、飲みかけのペットボトルを手にした叶が座っていた。
たった今来たというより、叶はここから俺に電話をかけてきたんだろう。

「悪いな祥平」

力なく笑う叶に、今からどんな話をされるか俺の心中は穏やかではない。

菜月ちゃんが好きだ…なんていわれたらどうしたらいいんだ俺…。

叶の顔を真っ直ぐ見ることが出来なくて、そっぽを向いたまま俺もベンチにこしかけた。