「美月?」

先生はキョトンとした顔をしてわしゃっともう一度大きな手で頭をなでると

「まぁ傷が残らないように頑張ったつもりだけど、万が一傷が残っちゃったら責任もって菜月ちゃんをお嫁さんにもらうから安心してな」

思いがけない先生の言葉にくすりと笑みがもれた。

「先生、いちいち患者さん責任もってお嫁さんにしてたら先生の奥さん大勢できちゃいますよ?」

「おっ!失礼だな。そんなに下手じゃないぞ俺は。
これでも凄腕の名医だからな。まぁ菜月ちゃんは傷が残ろうか残らなかろうがうちの息子の嫁さんだけどな」

「えっ…息子…?」

「そう息子」

にっと笑う先生の白衣のネームプレートを目にした私は目を見開き固まった。

「傷の消毒と抜糸はうちの病院においで。
今日は週に一度の大学病院の外来担当でここに来ててね。

祥平が俺に電話をかけてきて親父が処置してくれって。
大事な女の子だから頼むって。
病室に移動したら会えるからもう少し待っててな」