おばさんにお裾分けのスイカを渡すと早速冷やすから一緒に食べていきなと言われてそれまで亜也斗の部屋で待つことにした。

久しぶりだから緊張する。

いつも通り、いつも通り。

さりげなーく、花火の話題に持ってってさりげなーく、さりげなーく、誘う。

だけど…

もう誰かと約束してたらどうしよう。

いやいや、誘う前からそんなこと思わない。



ーーー諦めは無力にする。しかし希望はお前の力になりさらに上へと高く飛ばせる




コーチがいつもいってるじゃない。

って、今、陸上の話はいいって。

それよか…

なんで部屋でうずくまってんのよ。

思わずトイレ行きなよって言ったけど普通、恋する相手に女子はそんなこと言わないよね。

言った後から自己嫌悪。

落ち込みを悟られないよういつもの定位置に座りいつものようにテレビをつける。

けれど隣に座る亜也斗が気になってテレビに集中できないよ。

毎回楽しみにしているクイズ番組も今日はいまいち楽しめない。

へぇ…この人達、幼馴染みなのかぁ。

うちらと同じだね。

えっ、なになに?

クイズに勝ち今から100秒チャレンジをする前に司会者に意気込みを聞かれ成功したらここでプロポーズをしたいって男の人が話してる。

その隣で女の人が驚いた顔をするものの一瞬で笑顔になる。

そっか…成功したらただの幼馴染みから一気にプロポーズかぁ。

その司会者に是非ともどうすれば幼馴染みからそういう関係になれるものか聞いて欲しいよ。

こっちは花火すら誘うのに躊躇ってるって言うのに。

100秒後、見事成功して賞金を手に取りプロポーズを成功させるのか、司会者がいつもにまして煽る。

100秒後かぁ…

私達は100秒後もやっぱり幼馴染みなのかな。

きっと、そうだよね。

今だけじゃない。

何も言わなければ変わらない。

もしかすると…ずっと、このままがいいのかもしれないね。

変にギクシャクするより、このまま幼馴染みとして一番近くにいれたら…

だけど、

本当にいいの?

それは彼女が出来るまでって事だよね?

いつか、亜也斗の隣に私じゃない誰かがいてもいいの?

そんなの…