俺はお前しか好きになれない。

「お前は俺にチョコないの?」



私の頭に浮かんだのは歪なチョコレート、だけど、あんなものは絶対にあげられない。

雑誌に載ってたチョコレートと、テレビで取り上げられていたチョコレートと、みんなが作っていたチョコレートと違っているから。不格好だから。絶対に見せられない。



「ない……よ」
「本当?」

「う……ん……」
「嘘つけ。目泳いでる」

「うまくできなかったの!!!」
「べつにいいよ?」

「私は嫌だ」
「いいから」




きっと咲夜が受け取ろうとしたものはもっともっとかわいかっただろうし、好きな人にあげられるチョコレートじゃないと私が一番わかっている。

だから嫌だと言ったのに。



結局、咲夜に負けて、私はカバンにゆっくり手を突っ込んでチョコレートを取り出した。だけど、カバンの中で潰れてもっと歪なチョコレートが私の手の中にあった。

恐る恐る隣を見ると、笑いを堪えている咲夜の姿があった。だから嫌だったのにと唇を尖らせる。