美乃里と義妹の一件から暫く経った秋。

私は病院にいた。


あの一件で兄弟の盃を交わした、龍生と響は気が合うらしく、
よく連絡を取り合っているようだ。

そして、竜神会の若手を取りまとめる二人として尽力している。

2人は表の企業でも手を組んで、業績を伸ばしているらしい。

私としては、2人が仲良くしてくれるのは嬉しいかぎりだ。


私は、あの一件の数か月後二人目を妊娠した、そして今その子が
生まれようとしている。

蓮は本家で皆に見てもらっているので安心だ。

龍生は、大学を休み朝から付き添っていてくれていて、今も私の
腰をさすってくれている。

蓮の時も立ち合い出産だったが、今回も龍生の希望で立ち合いとなった。

龍生曰く、
「玲が命がけで産む大変な時、側にいれないのは辛い。
 そして、俺達2人の子供の誕生を一緒に感じたい。」

と、裏で冷酷無慈悲と言われている若頭とは思えない言葉を口にした。


「そろそろかな?」という看護士さんの言葉で分娩台に上がる。

何度も押し寄せる痛みに歯を食いしばる度に、ブワッと汗が噴き出るのを
感じる。

龍生の手を掴む自分の左手にも力が入る。

何度目かのいきんだ時、

「はい、頭が見えてきたよ。次、思いっきりいきんでね。」

と、先生の声が聞こえた。

そして、痛みと共に思いっきりいきむ。

「オギャー、オギャー!」

少し小さい声ながらも確かに聞こえた赤ちゃんの声。

「ハイ、元気な男の子ですよ!」

胸の上にまだ真っ赤な赤ちゃんが乗せられる。

「玲、ありがとう・・・。」

見上げた龍生の目には涙が流れていた。

「パパは、あなたが生まれて嬉しくて泣いちゃったみたいね。」

私が生まれたばかりの赤ちゃんに話しかけると一緒にオギャーと
泣いていた。