車が止まったのは、大きな屋敷の門の前だった。

車が止まるのを分かっていたかのように、静かに門が開く。

玄関までの長いスロープを車は静かに進む。

玄関の前には黒スーツの厳つい男たちが整列していた。

後部座席のドアを織田さんが開くと、龍生が降りる。

降りるのを戸惑う私に、龍生が微笑み頷くと手を伸ばしてきた。

私も龍生に微笑みながら応えるように頷き手を取り降り立つ。

「「 お帰りなさいませ!! 」」

「あぁ」一言返す龍生と頭を下げる私。



織田さんに連れてこられたのは、広い客間だった。

そこには二人の男女。おそらく、龍生の両親だろう。



「初めまして、早坂玲です。」

「玲さん、あんたは龍生が何物でも、何があっても離れないかな?
 綺麗ごとではすまない世界だ。
 犯罪者として警察に捕まるかもしれない、人も殺すかもしれない。
 それでも、ついていく覚悟はあるかい?」

恐ろしい程の威圧感とその内容に息がつまりそうだった。

でも・・・

「私には龍生さんの生きる世界の事はよく分かりません。
 ですが・・龍生さんに言われ私は全てを捨てて、ここに来ました。
 私には何もありません。
 この身も心も龍生さんに捧げると誓いこの場にいます。
 龍生さんと生きる道だけが、私の全てです。」

今、私が思う気持ちをそのまま伝え、向き合った。


「認めよう。龍生の見る目に間違いはないようだ。
 私は龍生の父親の大神 竜虎(オオガミ リュウコ)
 隣に座るのは妻の弥生(ヤヨイ)だ。
 今後の事は、織田が説明する。」