夜風に木々が吹かれ、サワサワ気持ちの良い音が聴こえるのを、窓から眺めつつ辺境領地特産の地酒をいただくのは、至福の時間だね。

そんなたわいもない事を考えていると、お義父さんと目線が合ってしまった。
仕方ない、色々報告もあるし、そろそろ座って話さないといけないな。
良い方なのだけど、威圧感半端ないから少し苦手なんだよな。


「宰相様、なんで今回辺境領迄来たのか、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないのか? 何か色々掴んでいるんだろ」


お義父さんの近くに椅子を置き、話し合いの体制を整えた。


「やめて下さいお義父さん。役職で呼ばないで下さい。
そうですね、今回来たのはマシェリーが元気になったので、辺境領地へのお伺いも兼ねて、遊びに来たのが一番です。

それと、キンダム伯爵の死因について、不可解な点がありまして。
ダニエラも嫁いだ先でもありますし、キンダム伯爵とはお義父さんも親しくされていたと知っていたので、ご報告にまいりました。陛下もご存知です」


「そうか、ルイスはやはり悪女に殺されとったのか……優しいおおらかな良い奴じゃったのにのう」


「キンダム伯爵は、違法性薬物を投与され、心臓病に見せかけての犯行だと思われます。
犯人は、ミネルバ.キンダム伯爵夫人と推測されます。
ミネルバ夫人は、キンダム伯爵領地が小さいながらも海に面していて、隣国との交流がある事を利用し、我が国では違法性のある薬物を違法に輸入していました。
夫人は巧妙に隠しており、伯爵は最近迄気付いていなかったと、報告には聞いています。
多分ですが、夫人を問い詰めて殺されたのではと、我々は考えています」


「だろうなぁ…儂は、ルイスが結婚する時反対したんだが、ルイスは女の趣味が悪くてのう。
あんな悪女に入れ込みおって。
ノースが悪女に似なくて良かったわい。違法薬物の噂も、多少儂の耳にもはいってはおったのじゃが…今更じゃが、ルイスも相談してくれておれば、生きて一緒に酒を飲めたのかもしれんのにのう………」


「夫人を調べていると、ステファニーにダニエラを真似て、手紙や嫌がらせをしていた事も分かったんですよ。
ダニエラ自体は、ノースと付き合いだしてからは、ステファニーには1つも嫌がらせをしていませんでした。
本人が漏らしていたようですが、面白がってしていたみたいです」


「ふぅーそうか…で、そろそろノースも、隣国ウェブゼンから王太子と帰国されるのではなかったか? いつあの悪女を捕まえるんだ?」


「ノースが帰国してからと、考えていたのですが、なにやらキンダム伯爵家の屋敷の雰囲気がおかしいようなのです。

先程、マシェリーがダニエラが痛がっている、泣いていると言っていたのも気になりますから、明日にでもここを出て、キンダム伯爵領に向かおうと思っています。
あちらで騎士団とも落ち合う手はずです。ステファニーとマシェリーを、宜しくお願いします」


「わかった、こちらのことは安心せい、お前のことだから大丈夫だとは思うが、ステファニー達を悲しませるんじゃないぞ。
ダニエラの事も色々あったが、儂には可愛い娘なんじゃ…よろしくたのむぞ。明日は早いんだろうもう休め」


「では、お義父さん失礼します」


私は部屋を出た。




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「ふぅー……おいキャサリン聞いてたんだろ」


カチャッと扉が開いて、キャサリンが入ってきた。


「ほれ、ルイスが好きだった酒を呑むから、付き合ってはくれんか?」

「いただきます」