緑豊かな自然溢れる辺境の地で、辺境伯夫人キャサリン・テイラーは、想い悩んでいた。

我が娘であるダニエラが、先日孫のニコラスを辺境の地へ預けて、ダニエラは帰ったのだけれど、どうも様子がおかしかったのだ…

あの子は少し、ワガママな所はあるものの、基本的には善悪は分かっていると思っている。 素直ではない所が、旦那様にそっくりなのよねぇ。髪の色も同じ鮮やかな紫色で、瞳はダニエラがローズウッドの色、旦那様がゴールドで、違うけれど紫のイメージが強いのよね。 我が娘ながら、妖艶な美女ですし、 旦那様はダンディーですしね。

~うふふふふ~


「おばあさま~アレクサンダーが、いじめてくるの~たすけてよ~」


林の中から、鮮やかな紫のゆるい癖っ毛を振り乱し、父親譲りの穏やかな茶色の瞳を、キラキラさせながらこちらに向かってテトテト一生懸命走ってくるのが、私の可愛い孫のニコラス。

今日はハイキングにしてよかったわ。お天気も良く、丁度良い風も吹く日だから、朝起きた時にハイキングにはピッタリだと思ったのよ。 辺境の地は、私兵も多いから適当に4.5人連れて来れば安全ですし。ニコラスも少し沈みがちだったのが、笑顔に変化したのが一番ね。

後…これは 内緒なのだけれど、いつのまにか大型犬のアレクサンダーが、我が家に住み着いて居て、今では我が家の一員です。あの子には、皆には内緒の秘密があるんですよ。 旦那様は気づいていますが、他には内緒です。


「ニコラス大丈夫よ、アレクサンダーは貴方と遊びたいだけだから、優しい子なのよ」


可愛いわね、ニコラスは私のお尻に隠れて、アレクサンダーを覗き見しながら、警戒心がバリバリしてるわ。


「でも、アレクサンダーぼくよりおおきくてこわいんだよ」

「ニコラス、アレクサンダーの目を見てどう感じるかしら?」


そーっと、お尻の後ろから出て来て可愛くニコラスが、アレクサンダーのつぶらな瞳を覗き込んでいるわ~可愛いわね~


「やめてよーペロペロしないでよーおめめがみえないからーきゃははははー
くすぐったいよぉーアレクサンダー」


じゃれ合っているアレクサンダーと、ニコラスを見ていると、とても幸せな気分になるわ~


「お母様お久しぶりです」


呼ばれて振り返ると、ステファニーがマシェリーと手を繋いで、此方に向かって歩いて来ました。


「キャサリンおばあさま、おひさしぶりでございます」

「まぁ可愛いカーテシーだこと~身体の方は大丈夫なの? 頭を強く打ったと聞いたわ。王都の方へ、逢いにいきたかったのだけど、辺境の地を離れるわけにはいかなかったのよ。ごめんなさいね」

「おばあさまもうだいじょうぶですわ」

「あらあらとっても可愛い笑顔だこと、なんだか雰囲気も明るく緩やかになっているわね。 ~うふふふ、良い感じねマシェリー。そーいえばニコラス、こっちへいらっしゃい」


少し離れた所で、アレクサンダーと可愛いくじゃれ合っていた、ニコラスを呼んで、ステファニー達に紹介したわ。子供達はアレクサンダーと、一緒に花を摘んだり、走ったり転げ回って遊んでいるわ。

私達は、近くでのんびり山々を眺めて、お茶をいただいているのよ。
~美味しいわ~


「お母様びっくりしたのではなくて? お父様がお母様には内緒にしてたなんて、私達知らなくて、先程着いてお父様に教えてもらったんですよ」

「旦那様にも困ったものね、気むづかしいのに悪戯好きなんて」

「お母様、マシェリーとニコラス君、楽しそうですね。 私達も昔は兄妹で良く山に来て遊んでいましたよね」

「そーねぇこんな感じで、4人兄弟遊んでいたわね。なかなか貴女とゆっくり話す機会が無かったのだけど、ダニエラはノース様と、とても仲の良い夫婦ですよ。 あの娘の性格上、素直になれないだけだと思うのよね。 早く仲直りができれば、良いと思うのだけれどね~」

「そうですね、そうなれば嬉しいです」


少し…寂しそうに笑みを浮かべる我が娘と、久しぶりに色々話ながら美味しいお茶をいただき、子供達の笑い声に幸せを感じるわ~

~旦那様には帰ってからおしおきしなくっちゃね~