「完成です!マシェリー様いかがですか?
ブルーグレーの柔らかふわふわの長髪を、此処はもう女神を目指して、前の方の髪をゆるく編み込んで後ろに向けて、流しました。
後ろの髪は下ろしてゆるふわです。
歩くと、ふわふわ靡きます。 髪に細かな宝石を散りばめれば。
完成です!ナチュラルに大人っぽく仕上げました」

「凄いですわ、可愛い!髪もドレスも凄いですが…
胸元が少しだけ露出あり過ぎな様な気もしますが?
化粧もなんだかいつもと違う様な気がします…」

「当たり前です!貴女はもう少女では無く女性ですから、本格的に攻めて行きました」

「そ、そうですか?攻めるのですか?寝ていたので、イマイチ感覚が掴めませんが…
メアリーがとても良くしてくれている事は、わかります。
ありがとうメアリー楽しんで来ますわね」


メアリーは、わたくしの言葉にとても優しい笑顔で返してくれましたわ。


「マシェリー様そろそろ始まって、暫く経ちましたよね。
此方にも音楽が響きますから、なんと無くですがわかりますね…
エドウィン様がいらっしゃる頃なのでは?」

「そうですわね…」


わたくしバージル様に逢うのが、緊張ですわ。
だって…寝てる間に透明なわたくしは、見てるだけでしたもの。
バージル様はわたくしの事を本当に……わたくし、男の方を好きになった事が無くて…
バージル様が寝ているわたくしに接しているのを、拝見してわたくし…わたくしは…


「そろそろ行くぞ!マシェリー。
場も和んで来ているから大丈夫だろう!おーまた一層、女神化が進んだな」


考え込んでしまいましたわね…
なる様になりますわよね…
度胸ですわマシェリー!それよりも!


「エドウィン様!!お酒の飲み過ぎでは有りませんか?
女性の部屋の扉を、ノックも無くあけるなど、明らかに酔っていますよね!」

「大丈夫だって!さあ!行くぞ。
今回の舞踏会、隣国の国王が何故か来てるんだよ。
それにな、重要な宣言があるらしく、我が国の重役達がピリピリしてるが…
まあ大丈夫だろう。

第一王女のリリー様は、王太子様のお妃様だし、お腹にお子も授かっているしな。
もうすぐ御生れになると思うぞ。
下手な事は国王も言わないだろう!
妹姫は、リリー様とは真反対の性格で、何かと問題児らしいがな…
俺は、近づかないからな…
あれは、あの手の女は苦手だ!」

「そうですの?大変そうですわね?
お酒に酔うと、エドウィン様は良く喋りますわね!
お酒が抜けたら教えて差し上げますわね」


エドウィン様は、メアリーから貰ったお水を一気飲みして、わたくしの手を、エスコートでは無く、引っ張って行きました。


「エドウィン様、これは駄目ですよね!エスコートして貰えますか?
引っ張って行くのと、エスコートして行くのは違いますからね」


駄目ですね!ずんずん進んでます……
エドウィン様は、酔うと大変面倒くさ…いえいえ!大変な感じになりますわね。

そろそろ、人が多くなって参りましたわね。
皆様振り返って行きますわ。
エドウィン様の足が速くて、わたくし久々の歩きなので、疲れましたわ。

皆様の視線も有りますので、そろそろストップですわね!
魔法を、久しぶりに使いましょう!
使えるか判りませんが?

心の中で、エドウィン様の足止まれ。


「あ!止まりましたわ」


丁度、会場の前の大扉に着きましたわね。エドウィン様は、いきなり足が進まなくて、悩んでおりますわね。
酔っ払いは、後で注意しましょうね。
エドウィン様は置いといて、扉は開かれていますわ…
中には煌びやかな世界が……わたくしが、一歩入り見渡すと。



「皆の者、少し良いかの!わらわからの宣言がございます。
わらわは、バージル様と婚約いたします。婚姻式は、我が国ウェブゼンにて行うゆえ、舞踏会が終わりわらわとバージル様は共に、ウェブゼンに向かいます。
短い間でしたが、このセイバー王国では、フレドリック殿下とお姉様のとても仲睦まじいご様子が見られて、安心いたしました。
わらわも最愛のバージル様を見つけてとても幸せを感じております」


会場は誰も言葉は無く、時間が止まったかのようで楽団の奏でる音だけが、広い会場に響き渡っている。

わたくしも理解できなくて動けなく……
マシェリーとの声に反応して視線を向けると会場の奥に階段があり、高いその場所には皇帝陛下やお父様がおり、その近くにバージル様とその腕に抱き着いて、幸せそうに笑っている派手目で綺麗な女性がいましたの。

わたくし、身体が勝手に回れ右をしまして、一気に走り出しました。
走っていたら窓を見つけましたので、そこまで浮き上がり、窓から外へと飛び出して空に飛び上がりました。


高く高く高く。


月に向かって飛びました。

目からポロポロ何故か涙が出ていますわ…