(王太子寝室)



「我が密偵から報告があるみたいだな…」


私は自室の窓から外を眺めながら呟いた。
報告は何かあると特別な連絡がある。
大概密偵を纏めているボイスが担う。
私が一番信頼している密偵だ。

セイバー王国王太子としての道を、進む為には私の手足として動く、信用出来る配下を探すのが、陛下の課題だった。
そこで私が探したのは配下ではなく、密偵だった。

私の年代に、使えそうな貴族の人間が居なかったのが、一番の問題だったのだが。
視野を替えて色々な人材から選べば、もっと幅が広がるのに気付いた私は、自身の眼と感覚的な魔力を使用して探し集めた。

私の興味が湧く人材の殆どが平民だった。
表に出すには不都合が多い為、密偵として起用したが、今では私には無くてはならない存在に変貌を遂げた。

密偵の報告時刻は決まっていない、場所も様々だ。
合図の後、人気の無い時刻に何処からともなく現れる事が多い。
私は密偵の存在を魔力で察知し呼んだ。


「ボイス」

「は」


大概ボイスが現れる。
私の前で、膝を片方付いて頭を下げている。


「どうなってる?」


頭を上げて目線を合わせて、報告が始まる。


「報告致します。ベネット.ファーマン男爵令嬢が、洗脳した学園の関係者学生20名教師8名です。

それぞれに、監視を付けています。
試験前日、深夜魔法を感知致しました。マシェリー.ハインツ伯爵令嬢によるものだと推定されます。

それにより、洗脳されていた者のほとんどに変化が起こりました。
教師達は、今回のテストの隠蔽および書き換え変更を致しませんでした。
精神的にも落ち着いています。
学生も落ち着きを見せています。

今回、配布した校章を付けた後は、監視体制も必要無いと思います。
学生の4名は洗脳と同時に好意も重ねていた模様。
よって今だに微かな洗脳と好意が残っている為監視続行致します。

レオナルド殿下は精神的抵抗していた為、他の者より重度な疲弊状態でしたので、試験前日深夜の魔法では解除されませんでした。
後日解除は、フレドリック殿下の目前で起こった事、全てです」

「そうか…洗脳以外にも何かしら危険要素を持っているかも知れないその、令嬢からは目を離すなよ。
だが、お前も少し休めよ」

「ありがとうございます。
先程入った報告で、ベネット.ファーマン男爵令嬢が部屋にて、マシェリー.ハインツ伯爵令嬢を亡き者にすると叫んでいた模様」

「そうか、マシェリー嬢には傷一つ付けないようにしてくれ、レオの恩人だからな」

「は」


返事と共に、ボイスは消えた。
私は、本当に良い密偵を持ったと思う。王太子になって、一番自分自身を褒めてやりたい事は、ボイス以下密偵達と出会えた事だな。