目覚めて一ヶ月

ほとんどベッドの住人になっておりますの。

過去と現在の状況が、頭の中で掻き回されて、ぐちゃぐちゃになってます。
例えるなら船酔い状態ですわね。
最近やっときちんと、過去と現状を把握できるようになりましたわ。

4歳のわたくしは、この御屋敷内の記憶と公爵令嬢教育しか頭に入っておりませんでしたの。
性格は喜怒哀楽の無い、言われたまま動く人形みたいな自分自身に、かなり驚きましたが。
少しずつではありますが、自分を出して行こうと思っております、まずは笑顔ですわね。

女の子は笑顔第1ですもの。
笑っておりましたら大抵の事は切り抜けられますわ!うふふふふっ

小さく部屋の扉を叩く音が聞こえます。
その後静かに扉が開きました。


「マシェリー……具合はどうだい?
今日は起き上がられそうかい?」


心配そうに顔を覗かせ、聞いてきたのは、 セイバー王国宰相を務めているハインツ公爵。わたくしのお父様ですわ。
陛下の補佐をしておりまして、大変お忙しい方の筈なのですが、何故か頭を打ってからは、良くお顔を拝見いたしておりますわね?わたくしと同じブルーグレーの髪をオールバックに流し、濃紺の鋭利なまなざしがとても凛々しい美形ですわ眼福です!

お父様は落ち着いた足取りで、わたくしのベット迄歩いて来ましたそして、側に置いてあった品の良い椅子に座って安心した様に息を吐きながら。


「今日は大分良さそうだね、でも無理は駄目だからね、しばらくは安静にして居なさいわかったね!」

「ごしんぱいかけて、もうしわけありません。
わたくしはだいじょうぶですから、おしごとだいじょうぶなのですか?」


突然、暖かな物に囲まれておりました。


「初めての我が子で、どう接して良いのか解らない事ばかりで、ついつい距離を置いて居たんだよ。
こんな事になって、失いかけてやっと気付いたよ……マシェリーの大切さに」


抱き締められておりました…
胸があつくなり涙がとまりません……

頭の上からもう1つ
震えながら優しく撫でてくれる暖かな手がありました。
顔を上げてみると、ストロベリーブロンドをふんわりカールした長髪に、ゴールドの瞳の豪奢な美人が涙を流しながら微笑んでくれていました。