「ふふ、心強いね。ありがとう」


中里くんと話していると自然と元気が出てくる。なんだろう、この胸の温かさは。



『とりあえず、俺が本庄に話してみようか?』


「ううん。ちゃんと私が話すよ。中里くんばかりに甘えていられないもの」


私が強くそう言うと、中里くんは安心したような声で『そっか』と言った。


「あ、そろそろ電話切らないと」


ふと、スマホに表示されている時間を見ると、夜の9時33分になっていた。


お父さんが帰ってくるのが大体10時ちょっと前。玄関からベランダは見えちゃうから電話してるのがバレないように早めに切り上げないとね。



『あ、じゃあ1個だけいい?』


「うん、何?」


『いつも風の音聞こえるんだけど、外で電話してんの?』


「そうそう。ベランダでね。電話してるのバレたら怒られちゃうから」


お父さんだけじゃない。

お母さんや咲にバレたらお父さんに告げ口されて怒られるに決まってる。だから声が漏れないように外で電話するしかないんだ。



『……そうか。風邪ひかないようにな』


「うん。ありがとう。おやすみ」


『おやすみ、また明日』



電話を切った後、私は可愛らしいスタンプを彼に送信してから自分の部屋に戻った。