「意味わかんないんだけど」


「わ、私が本庄さんの立場だったら同じことするかもしれない。ううん、私は弱いからきっと見て見ぬふりしちゃうよ。だから本庄さんを嫌な人なんて思えないよ」


たまたま私がいじめられる側でたまたま本庄さんがいじめる側になってしまっただけ。逆の立場なら私も流されて一緒にいじめてしまっていたかもしれない。

だから私は見て見ぬふりをして逆らえない人を恨むことが出来ないんだ。


「違う形で神崎さんと出会えていたら、友達になれたのかな」


「え？」


本庄さんは悲しそうに呟くと、机の上の教材をカバンにしまって立ち上がった。


「ごめん。いじめっ子と一緒の空間とか気分悪かったでしょ。もう帰るから」


彼女は私の横を通り、急いで学習室を出ていった。



『そんなことがあったのか』


「うん。なんだか悩んでる感じだった」



私はその日の夜、中里くんに今日起きたことを電話で話した。


『そっか。本庄も本庄でなにか複雑な事情がありそうだな』


「うん。それにね、もう違う形で私と会えてたら友達になれてたのかなって言われたの。それってどういう意味なのかな」