「そっか。なるほどなぁ」


中里くんはとても嬉しそうに笑いながら私の教え通りに解いていった。



「元々要領がいいんだね。こんなにすぐ理解しちゃうなんて」


「そう?ありがとう。中学の時は頑張って上位取ってたからそのせいかな」


「高校からサボったの?」


私がそう尋ねると、彼は少しだけ考え込むようにして頷いた。



「でもまあ、努力したらすぐに上位取れそうだよね」


「だろ?だから勉強教えてよ。分からないところとか」


「もちろん。中里くんには色々感謝していることが多すぎるもの」



普通の学校生活が送れるのは全部、中里くんのおかげだから。もちろん、私へのいじめが無くなったわけじゃない。

陰口は前より酷くなった気さえする。

顔立ちのいい転校生の中里くんとムードメーカーの野田くんをたぶらかす女という新しい噂は校内にたちまち広がった。


それでも中里くんと野田くんのおかげで学校が楽しいと思えるようになった。




「え、嘘でしょ……?」


だけど、楽しい時間は永遠には続かない。

事件は2時間目が終わったあとに起きた。机の中に入れていた教科書が全部無くなっていた。

少し席を離れていただけなのに……。