「そっか」


『そういえば、もうひとり居たな。神崎が死んでめちゃめちゃ泣いてたやつ』


「え?」


私はその名前を聞いて驚いた。本当にその人なのかと私は何回も中里くんの確認をとった。



「間違いねぇよ。派手な化粧が崩れるくらいまで泣いてたし……あの子って同じクラスだよな?」


「うん。磯貝さんとかと同じグループの子」


もう少し話を聞こうとした時、お父さんの怒鳴り声が下の階から聞こえてきた。


『どうした?』


「ごめん、今日は切るね。また明日」



私はすぐに電話を切って部屋に入り、勉強机に座って教材を出した。下から響く声を聞いてみると、夕食が冷めていることに対してお父さんは怒っているようだった。


またお父さん、怒ってる。

私が高校受験失敗したあの日から私の家族は変わってしまった。優しい母、賢い父、可愛い妹、何不自由ない家庭だった。

それを壊したのは間違いなく私だ。


「学校でのいじめが解決したって家庭の問題は誰にも解決できないよね」


そんなことを呟きながら、私は中里くんが言っていた人物を思い浮かべた。


「考えても仕方ない、か」


私は考えてたこと全てを一旦忘れて、期末テストへの勉強を始めた。