「じゃあ、俺行くから」


中里くんは特に何のリアクションもせず、私達に背を向けて歩き出した。


そんな……。


手の震えが止まらなかった。

いくら直接的ないじめはしてこなかったとはいえ、普段関わりのない人と二人きりなんて！



不安に押しつぶされそうになっていると手に持っていたスマホにメッセージが入った。中里くんからだった。


『野田はお前をいじめたりはしない。だから変に怖がらないで。大丈夫だから。野田を信じてやって欲しい』


そう言われたって怖いものは怖いのに。
私はどうしたらいいんだろう。


そんな文面を見て私は野田くんの方へと視線を向けた。


「んじゃ、早く帰ろうぜ」


野田くんはそう言って歩き出した。私は彼の背中を少し見送ってから遅れて彼の後ろを歩き出した。



「なぁ、あの噂って本当なの？」


突然、歩いていた野田くんは足を止めて私の方を振り返った。


「あの噂って……？」


「近藤に二股かけたってやつ」


違うとちゃんと声を出そうと口を開いたが、声が出なかった。私はどうにか反応しようと必死に首を横に振った。


「近藤って野球部じゃん？普通に友達だし。だから俺、色々聞いてたんだよね」



トモダチ？野田くんと近藤くんが？


私はその言葉を聞いて1歩後ずさりした。