「そんなに笑うことかぁ?さっきだってレモンティー買うために教室出たんだぞ?」


顔はみんなが振り返るほど、かっこいいのになんだか可愛らしい。これがギャップ萌えってやつなのかな?


「てか、神崎が笑うの初めて見たんじゃね?俺」


「そう?」


「ずっと無表情っていうか、抜け殻みたいだったっていうか」


「嫌なことが続いて笑うことを忘れてたから。でも中里くんのお陰で思い出せたよ。ありがとう」


私が少し微笑んで感謝すると中里くんは頬を赤らめてそっぽを向いた。


「ちょっと反則じゃね?」


「え、何が?」


「別になんでもねー!」


「え、何よ!」


こんな風に普通の会話が出来ることが今までの嫌のことを全部忘れるくらい嬉しい事だった。



「まだレモンの匂いするなぁ」


6時間目が終わった頃、隣に座る中里くんが唐突にそんなことを言い出した。


「え、まだ?」


「うん。なんか、うんって感じ」


私は自分の長い髪を少し手に持って鼻の近くに持っていくと、微かなレモンの香りが感じられた。


「うっ、ほんとだ」


まだ髪の毛ベトベトしてるし、本当に最悪。


「よう、中里!今日一緒に帰れる?」