あの虹が見えた時、私はあなたに恋をする

私は彼から借りたタオルで濡れた髪の毛を少しだけふき取った。


「神崎はこんなことがずっと続いて……あんな道を選んだのか?」


学校のいじめだけじゃないけれど、彼に家族のことを言ったってしょうがないよね。



「そうだよ。こんなことでって思う?」


「思わないよ。神崎の苦しみは神崎にしかわからないことなんだから」


どうして彼はそんなことが言えるんだろう。まるで自分も何かに苦しんでいたみたいに……。


「というか、神崎ちょっとレモン臭くない?」


「もしかしてレモンティーかけられたのかな」


「は?まさか紅茶かけられたわけ?」


「そうだけど……」


水じゃなくて紅茶なあたり本当に悪意を持ってるんだなって感じる。



「紅茶勿体ねぇとか思わねぇのかな。いじめるために紅茶捨てるとか阿呆だろ」


あ、怒るとこそこ……?


「もしかして、紅茶好きなの?」


「大好きだよ。好きだから好きなものが汚されることが許せねぇ。もちろん、神崎がいじめられるのも許せねぇけど」


「ぷっ、あはははは」


彼の意外な発言に私は口を大きく開けて笑った。


「なんで笑うんだよ?」


「だって、紅茶が好きだから怒るって面白いんだもん」