あの虹が見えた時、私はあなたに恋をする

『わかった。そっち行くね』


私は彼にメッセージを返すと濡れた制服を片手にトイレから出た。廊下を歩くと、誰かとすれ違う度に視線を感じた。

当たり前だ。

頭が濡れた体操服姿の女が制服持って歩いてるんだもの。


当たり前だと思っているのに向けられる視線はとても痛くて苦しくなった。



「神崎!?お前、大丈夫か!?」


玄関へ行くと、私の姿を見た中里くんが心配そうな表情を見せて駆け寄ってきた。


「まだびしょ濡れじゃないか!なんで俺に来てって言わなかったんだ……」


「女子トイレに呼ぶのはちょっと…… 」


「別に女子トイレの中に入るわけじゃねぇじゃん。入口にいてくれれば良かったのに」


あ、それもそうか。
全然頭が回ってなかったや。


「それで……なんで私を呼んだの?」


「これ」


中里くんは私に真っ白なタオルを差し出してきた。


「絶対いると思って」


「こんな綺麗なタオル、使えないよ」


「神崎は謙虚になりすぎなんだよ」



中里くんはそう言うと私に無理やりタオルを被せた。


「わっ!」


「使っとけ。そんなんで授業出られないだろ?」


「うん。ありがとね、本当に……」