あの虹が見えた時、私はあなたに恋をする

私は中里くんの近くにあるトイレを使わず、わざわざ遠回りをして誰もいない別のトイレに駆け込んだ。


もう、なんで私がこんな目に……。


周りからの視線、陰口、噂……どんなに些細なことでも溜まれば辛い。


「はぁ」


私は制服から体操服に着替えて、頭にべっとりと付いた紅茶を水道を使って洗い流した。


「全然落ちない」


砂糖が溶けた液体がこんなに落ちにくいものだったなんて……。

落とすのを諦めかけてた時、制服のスカートに入っていたスマホに通知音が入った。私は少し濡れたスカートからスマホを取りだした。


通知オフにするの忘れてた。


送り主の名前を見ると中里くんと書いてあった。


『今、どこ』


どこって言われても、こんな状態じゃ会えないよね。


『ちょっと飲み物を買いに行ってるよ』


『嘘つくな』


直ぐに既読がつき、返信が返ってきた。



『神崎の机周辺が濡れてたんだぞ?水かなにか掛けられたんだろ』


『うん』


『今から玄関来れる?』


玄関……?どうしてそんな所に?


『それとも俺がそっち行った方がいい?動けないくらい大変なことになってる?』


流石に女子トイレにまで来てもらうのは気が引けるなぁ。まだ髪の毛濡れたままだけど、仕方ないよね。