「人に気づかれる前にやらなくちゃ」


私は黒いペンで書かれた悪口だらけの上履きを脱いで、フェンスの近くに置いた。

そしてフェンスを越えて落ちるか落ちないかのギリギリのところに足を置いた。


「……ふぅ」


私はゆっくりと深呼吸をして震える手を必死に抑え込んた。


大丈夫、大丈夫。

一瞬で終わるはずだから。



「……さようなら」


私はポツリと呟いてフェンスから手を離し、そのまま身を暗闇に委ねた。


もし、生まれ変われたら、

友達をたくさん作ろう。

出来ることなら彼氏も作ろう。

兄弟とは仲良くしよう。

親にはできるだけ親孝行しよう。


そして私の愛を多くの人に届けよう。


空へと舞った私の身体はすぐに地面に向かって落ちていった。特に何も感じることも思うことも無く、私の身体は鈍い音を出してコンクリートにぶつかった。


さっきまで夜風に当たっていたせいで冷たかった身体がとても、とても暖かく感じた。


これできっと私も……楽になれる。


そんなことを思いながら、重い瞼をゆっくりと閉じた。


私、神崎 穂希(ｶﾝｻﾞｷ ﾎﾏﾚ)は十七歳という短い生涯を終えた。