中里くんと屋上で別れたあと、私達は一切話すことは無かった。きっと私の噂のことを聞いてしまったんだろう。

そして軽蔑したんだろう。


自分が自殺を止めようとしていた女がどれだけ最低なのかを。


だから話しかけなかったんだと、

そう思っていた。



「おはよう、神崎」


次の日、彼は普通に話しかけてきた。


「え、おはよう……」


教室にいたクラスメイト達はザワついた。特に驚いていたのは磯貝さんだった。



「俺、神崎と連絡先交換するの忘れてたんだけど！交換してくんね？」


「いや、でも……」


クラスメイト、特に女子の視線がとても痛くて、この場からすぐに逃げ出したかった。



「え、駄目？」


「中里くん、私の噂……聞いたんじゃないの？」


「聞いたよ？高1の頃、二股して当時付き合ってた隣のクラスの近藤を傷つけたってやつだろ？あとは人の彼氏を寝とったとか？」


「知ってるならなんで私に話しかけてくれるの？最低だって思わないの？」


「俺は本人から聞いた話じゃないと信じねぇし、神崎がそんなことする人に見えない。だいたい、根も葉もない噂でコソコソしてるヤツらの方が最低だろ」