気がつくと、私は涙を流していた。

出会って間もないのにあんなことを言われるだけで嬉しくて泣いてしまった。


「ごめん、ね。そんなこと言われたの初めてで嬉しくて」


「……大丈夫。何度でも言ってやるから」


中里くんは少し躊躇しながらも私をしっかり抱きしめて頭を撫でた。

私はまるで小さな子供のように泣きじゃくって……落ち着いた頃には1時間目終わりのチャイムが鳴っていた。



「教室、戻れるか?」


「うん」


本当は戻りたくない。

戻りたくないけれど、もうこれ以上、中里くんを巻き込んでいけないと思った。



「じゃあ、行くか」


「先に行ってて。私、もう少し落ち着いたら行くから」


「そっか。先に行ってるから」


「うん、バイバイ」


私が小さく手を振ると、彼も同じようにして屋上から去っていった。



もう、これでさよならだね。


頭の中ではわかっていた。


どんなに友達だと言ってくれる人がいてもその人は必ず私の悪い噂を信じて離れていこうとする。

だから中里くんもきっと同じ。

あんなこと言っていたって人間は集団に流されてしまうもの。



もう二度とあんなふうに喋れないと分かっているのに、中里くんは違うかもしれないと思う私は本当に馬鹿みたいだ。