━━ここは、なつきとまなみが住んでいるアパート。

二人は、テレビを見ていた。

「なつき…。」
まなみが声を掛けた。

「何?」
なつきは、まなみを見た。

「先にシャワー浴びてもいい?」
と、まなみが訊いた。

「うん、いいよ。」
と、なつきは頷いた。

「ありがとう。」
そう言うと、まなみは部屋に戻った。

━━暫くして、まなみは着替え等を持って出て来た。

そして、脱衣所へと向かった。

まなみは、着ていたシャツのボタンに手を掛けて、外そうとした。

「?」
まなみは、何か視線のようなものを感じた。

━━その時!!


「キャー!」

浴室の方から、悲鳴が聞こえたので、なつきは急いで浴室へと向かった。


「ま、まなみっ!」
と、なつきが脱衣所に駆け込んだ。

━━そこには、へたり込んでいるまなみと、虎之助達がいた。

「ど、どうしたの?」
と、なつきが訊いた。

「シャワー浴びようとして、服を脱ごうとしたら、コイツらが覗いてたの!」
と、まなみは言った。

「え!?」
と、なつきは目を丸くした。

「い、いえ、我々は別に…。」
と、虎之助が弁解した。

「じゃ、何でここにいるの?」
なつきは、幽霊を睨みつけた。

「そ、それは、ぐ、偶然…。」
と、虎之助はしどろもどろした。

「いかがなされましたか?」
悌二郎が現れた。

「悌二郎君。」
なつきは悌二郎を見て、
「虎ちゃん達が、まなみの着替えを覗いたのよ。」
と言った。

━━いつの間にか、なつき達は、悌二郎を“悌二郎君”、虎之助を“虎ちゃん”と呼んでいた。

「え!?」
悌二郎は虎之助を見て、
「虎之助殿、誠か?」
と訊いた。

「違う、悌二郎。」
虎之助も悌二郎を見て、
「本人に偶然なのだ。」
と言った。

「もし本当に偶然でも、困るなぁ…。」
と、なつきは言った。

「……。」
悌二郎は少し考えてから、
「松平様…。」
と、なつきを見た。

「何?」
なつきも悌二郎を見た。

「この近くに神社がございます。
そこで、“御札(おふだ)”を貰って来て下され。
その御札を立ち入られたくない部屋の壁の4面に貼って下されば、我々は立ち入り出来なくなります。」
と、悌二郎が言った。

「何でもっと早く教えないのよ、エロガキ!」
と、まなみが文句を言った。

「申し訳ございませぬ。」
悌二郎は、頭を下げて、
「以前、ここにいた方達は、すぐに出ていてってしまったので、このような事は、我々も初めてなのです。」
と答えた。

「あぁ、そういう事…。」
と、なつきも納得した様子。

━━確かに、幽霊とこんなに会話をする生身の人間も珍しいだろう。

「分かったわ。」
と、なつきは幽霊達を見て、
「私達の各部屋と、浴室、トイレの4ヵ所、全部で16枚用意するわね。」
と言った。


━━翌日、なつきとまなみは、御札を買いに行った。

その御札を、なつきとまなみの各部屋、浴室、トイレの4部屋の壁4面に貼り付けた。

「ねぇ、なつき…。」
と、まなみがなつきを見た。

「ん?」
なつきもまなみを見た。

「私、御札とか信じないタイプなんだけど、こんな紙切れで効くのかな?」
と、まなみは不安そう。

「私も、御札とかは信じてないけど、とりあえず、様子を見ましょう。」
と、なつきは言った。

━━ここは、まなみの部屋。
二人で御札を貼り終えたところだ。


《バチッ!》
と、部屋の外から音がした。

『いってぇ!』
と、部屋の外で声がした。

二人は、まなみの部屋を出た。


━━そこには、倒れて痛がっている幽霊がいた。

「き、効いてる…。」
と、まなみは呟くように言った。

「う、うん…。」
なつきは頷いた。

「なんか、コンビニの前とかにある、蚊を除けるブルーライトみたいな音だったね…。」
と、まなみが言った。

「確かに…。」
と、なつきも納得している様子。


御札の結界の効力は、なかなかのようだ…。