「ああ、もうみんな着替え終わりそうだね。急ご!」
 留依はさっさとジャケットを脱いで、ベストも脱いで、ブラウスだけになった。
 その下。
 それを見て、美久はちょっとどきっとしてしまった。
 留依の下着はずいぶん色っぽいものだったのだから。
 ふっくらとした胸を飾るのは、ピンク色の細かなレース。形だって凝っていた。胸の谷間のところが低くなっていて、そこにリボンがついている。
 もちろん、ちらっとしか見えなかった。留依はすぐに体操着のシャツをかぶってしまったから。
 そしてスカートの下に体操着のハーフパンツを穿いて、それからスカートを脱いで……。
 ぱっぱっと着替えていく留依の横で、最後にジャージの上をはおりつつ、美久はどきどきしてしまった。
 下着姿、というよりも、留依がこんなところまでオシャレであることに、だ。
 そりゃあそうかもしれない。下着だけ手を抜いたりするわけはないだろう。
 でも美久はあまりこういうものは見たことがなかったのだ。
 クラスでも華やかなあかりなどはこういうかわいくて大人っぽいものをつけているけれど、当たり前のように遠目にしか見たこともないし。
 美久にとっては縁のないもの、と言ってもよかったかもしれない。
 下着は付けているに決まっている。けれどそれはそっけない、飾りなんてほんの少しだけのレースがついた、中学生のつけているようなスポーツブラがちょこっとだけ進化したようなもので。
 色っぽさなんて皆無のもの。
 残念ながらというのかなんなのか、美久はそれほど胸が豊かではないので、急いで「大人向けのを買わないと」とはならなかったのも手伝っているだろう。ずるずると、中学生から同じようなものを使い続けているというのは。
 でももう高校生だし、二年生だし。
 こういうものは子供っぽいのかもしれない。
 こんなところから思い知らされてしまって、美久の胸がちょっと痛んだ。
「先行ってるねー」
 そのうち、着替え終わった子たちから次々に出ていってしまう。留依はまだ着替え中であるのに。