「恵一がなにか思い出せば、この空間も変わるかもしれない」


あたしは恵一の隣に立ってそう言った。


「でも、なにもわからない。俺、そんなに悪い事してきたかな……」


だんだんと自信が失われて来ているのか、恵一の声は弱弱しくなっていた。


今までしてきたことのすべてが、誰かにとってはマイナスな出来事に繋がっていたのではないかと悩んでいる。


でも、あたしが見て来た恵一は、いつでもキックボクシングに熱心だった。


先生から才能を認められていたし、大会ではいつでも1位2位を争う実力もあった。


恵一自身もキックボクシングが大好きなようで、教室ではスポーツ雑誌を毎日のように眺めていた。


キックボクシングだけで食べていくことは難しいみたいだけれど、自分から自分の経歴に傷をつけるようなことをするとは思えなかった。


「あたしも一緒に考えてあげるから、心当たりがあることがあったら話てほしい」


あたしは恵一の肩に手を置いてそう言った。


「あぁ……」


「特に、このメンバーとの関係性だと思う」