婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する

 前世でプレイした『王子と乙女のセレナーデ』の記憶を、新たに思い出したのだ。

 幻と呼ばれた激レアルートで、悪役令嬢アンジェリ―ナは、後付けキャラを攻略して幸せを掴む。その相手こそが、ツンデレキャラの王宮騎士団長ビクターなのだ。

(でも、こんなシナリオじゃなかったわ)

 前世で一度だけプレイした記憶によると、アンジェリ―ナは領地に帰された後、酒場でビクターと再会するはずだ。

 そして恋に落ち、持ち前のしたたかさでツンデレ全開の彼を攻略していく。

 純粋無垢なエリーゼがスチュアートを攻略するのとは違う展開が楽しめるシナリオだったはずだ。

『近寄るな、邪魔だ』
『お前のような女は好みじゃない』
『チッ、面倒ばかりかけやがって』

 序盤はツンツンの彼が、終盤はポロっと甘い言葉を吐くようになる。

『他の男のものになるくらいなら、俺が奪ってやる』

 それがたまらなくよいのだ。

(そういえば、ここは本来激レアルートのはずなのよね。だけど領地に帰されるところを、私が強引に塔に幽閉されにいったものだから、彼の行動に変化が生じたんだわ)

 そして、ビクターのツンデレキャラもブレてしまった。アンジェリ―ナが一向に彼を攻略しに来ないから、このままでは見込みがないとみて、ツンよりデレの比重が重くなってしまったのだろう。

「なんてこと……」