婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する

「私はララと申します。あなたをお助けしたいと考えている、心優しい乙女にございます」

「ラ、ラ……?」

 喋った、いい感じだ。

「歩けますか?」

「歩、けます……」

「でしたら、安心いたしました。あなたをこのララがお救いするべく、お部屋までご案内したいと思います。散らかっていますので、どうぞ目は開けずに私に身体をお預けくださいませ」

「も、申し訳ない……」

 アンジェリ―ナは男の手を肩に掛ける。すると男は片方の手をアンジェリ―ナの肩に預け、反対側の手で塔の壁に手をつき、よろよろと立ち上がった。

「では、参りましょう」

 男に肩を貸しながら、アンジェリ―ナは歩き出す。裏口から入り、厨房を横切って、階段を目指した。男はアンジェリ―ナの言いつけ通り、終始目を閉じてアンジェリ―ナの肩に寄りかかっている。

 鋼のような肉体の気配がした。きっと細マッチョのいい体つきに違いない。

 笑みが零れそうになるのを必死に抑えつつ、アンジェリ―ナは三階の空き部屋まで彼を連れて行った。

 ベッドにその身を横たえてあげれば、目を閉じたままの彼は気持ちよさそうに表情を和らげる。