昨日の、バーベキュー師匠だ。相変わらずの無表情で、じっとこちらを見ている。

(そうだわ!)

 閃いたアンジェリ―ナは、バーベキュー師匠のもとへと駆けて行く。

「いいこと? 今からあなたに、もやしの作り方を教えるわ。だから、あとは自分たちで作ってちょうだい。私は毎日あなたたちにもやしのベーコン巻きを作ってあげるほど、暇じゃないの。火おこしの上手なあなたなら、きっとすぐにもやしの作り方だって覚えるわ。あと、ベーコンの残りもあげる。今回だけの、特別サービスよ」

 アンジェリ―ナの必死の提案に、バーベキュー師匠はこっくりと頷いた。

 そうして、槍のような鉄柵を挟んで、もやしの育て方講座が開始される。

 バーベキュー師匠は、あっという間にもやしの育て方を覚えたようだった。最後に乾燥した大豆の種をいくつかと、瓶や布も分けてやる。

「わかっただ、やってみる」

 もやしの栽培セットとベーコンを受け取ると、バーベキュー師匠はそう言い残し、子供たちと連れ立って塔から去って行った。

「はあ~、よかった。これで、平穏無事な生活を取り戻すことができたわ」