アンジェリ―ナが現れるなり、柵の隙間から手を伸ばして、子供たちが口々に言う。その姿は、まるで母鳥に餌を求めるひな鳥のようだった。

「腹減った」

「昨日のあれちょうだい」

「あのシャキシャキしたやつ、すんげー美味しかった」

 このままでは、楽しいネクラ趣味生活が阻害されてしまう。

 慌てたアンジェリ―ナは、柵越しに彼らと向かい合い、必死に捲し立てる。

「言ったでしょ、ここは極悪人が幽閉されている世にも恐ろしい塔なの! ほら、お墓がいっぱいあって怖いでしょ? あなたたたちのような清い子供たちが来る場所ではないわ!」

 ところが、アンジェリ―ナの憤りなどものともせず、子供たちはもやしのベーコン巻きを催促する声を止めようとはしない。

「アンジェリ―ナ様。もしかして昨日、恵まれない子供たちに食べ物を与えたのですか? ああ、なんとお優しい。やはりアンジェリ―ナ様は、聖女さまと呼ばれるべきお方ですわ」

 隣では、ララがすっかり勘違いして涙ぐんでいる。

 どうしたものか、と考えこんでいると、ふと子供たちの中に赤い頭を見つけた。