婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する

「いや～、もやしのことを差別して、反省しましたよ。人と同じで、野菜は見かけによらないものですね」

　残った調味料を飲み干したララが、感慨深い声を出す。

「分かってくれたらいいのよ」

「それにしてもアンジェリ―ナ様。このもやしとかいう野菜を、たった一週間でお育てになったんですか？　そんなに早く育つ野菜がこの世に存在するとは、知りませんでしただ」

　トーマスの問いに、アンジェリ―ナは頷いた。

「そうよ。暗いところと水さえあれば、もやしはあっという間に育つわ」

　すると、トーマスは何かを考えこむように顎先に手を当てて押し黙る。

　アンジェリ―ナが眉間に皺を寄せた。

「トーマス。それは、イケメン以外してはならないポージングよ。おやめなさい」

「アンジェリ―ナ様。的を得た発言ではありますが、ちょっとだけ失礼ですよ」

　アンジェリ―ナとララのふとどきな会話を無視して、トーマスが生真面目な顔を向けてきた。

「この塔が建っている界隈は、年中天候が悪く、農作物不足に悩まされていますだ。あっしもこの界隈で育ったので分かるのですが、子供たちはいつも腹を空かせていますだ」