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「アンジェリーナ様、目をお覚ましになられてください! ご自分が何をされているかお分かりになられているのですか!?」
アッサラーン王国の王都の外れを走る馬車の中では、しきりにララが喚いていた。城を出てから、ずっとこの調子だ。
「分かっているわよ。エリーゼ様を探しに行くの」
「だから、それをしてどうなさろうと言うのです!?」
「だから、何度も言ってるでしょ? 猫耳をつけてもらうの」
アンジェリーナは微笑むと、ふわふわの猫耳カチューシャを掲げて見せた。
「あ、そうだ。それが終わったら“悪魔の塔”に戻るから、その前に豚を捕まえなきゃね」
「言ってることが、さっぱり分かりません! 『悪魔の塔に戻る』は理解しがたいけど理解するにしても、豚って何ですか!? なぜに豚を捕まえるのですか!?」
アンジェリーナはしたたかに微笑むと、「スクイーズよ」と答える。
「すくいーず……?」
「豚の膀胱に小麦粉を入れれば、あの病みつきになるやわらかさを再現できると思うの。小麦粉は“悪魔の塔”にストックがあるはずだけど、豚の膀胱はないから調達しておかないと」
生き生きと語るアンジェリーナを前に、ララは馬車の床を貫き地下にまで落ちていきそうなほど深い溜息を吐いた。
「ビクター様という最高の婚約者様に愛されながら、どうしてそのような愚行に走るのでしょう? それにアンジェリーナ様。これでは、陛下の命令に背いたことになります」
「愚行? いいえ、これは尊い趣味よ。それに陛下の命令には背いていないわ。私はちゃんとビクター様と結婚します。ただ、別居するだけ」
「アンジェリーナ様、目をお覚ましになられてください! ご自分が何をされているかお分かりになられているのですか!?」
アッサラーン王国の王都の外れを走る馬車の中では、しきりにララが喚いていた。城を出てから、ずっとこの調子だ。
「分かっているわよ。エリーゼ様を探しに行くの」
「だから、それをしてどうなさろうと言うのです!?」
「だから、何度も言ってるでしょ? 猫耳をつけてもらうの」
アンジェリーナは微笑むと、ふわふわの猫耳カチューシャを掲げて見せた。
「あ、そうだ。それが終わったら“悪魔の塔”に戻るから、その前に豚を捕まえなきゃね」
「言ってることが、さっぱり分かりません! 『悪魔の塔に戻る』は理解しがたいけど理解するにしても、豚って何ですか!? なぜに豚を捕まえるのですか!?」
アンジェリーナはしたたかに微笑むと、「スクイーズよ」と答える。
「すくいーず……?」
「豚の膀胱に小麦粉を入れれば、あの病みつきになるやわらかさを再現できると思うの。小麦粉は“悪魔の塔”にストックがあるはずだけど、豚の膀胱はないから調達しておかないと」
生き生きと語るアンジェリーナを前に、ララは馬車の床を貫き地下にまで落ちていきそうなほど深い溜息を吐いた。
「ビクター様という最高の婚約者様に愛されながら、どうしてそのような愚行に走るのでしょう? それにアンジェリーナ様。これでは、陛下の命令に背いたことになります」
「愚行? いいえ、これは尊い趣味よ。それに陛下の命令には背いていないわ。私はちゃんとビクター様と結婚します。ただ、別居するだけ」



