すると、チェストを開け閉めしていたララが、不思議そうな顔でアンジェリーナに問いかけてきた。彼女の手もとには、ふわふわの三角がふたつ並んだような不思議なものが握られている。
たまらない既視感に襲われ、アンジェリーナは大急ぎでララの手からそれを受け取った。
「これって、猫耳カチューシャ……?」
そこで、頭の中で閃光が弾け、記憶が蘇る。先ほどビクターがかけていた眼鏡に、そして猫耳カチューシャ。
(たしか、『王子と乙女のセレナーデ』のプレイ終了後に貰えるご褒美アイテムだわ)
眼鏡または猫耳カチューシャを攻略キャラにプレゼントして、レアなスチルを楽しむためのイベントだ。
ビクターが眼鏡を持っていて、部屋に猫耳カチューシャがあるということは、ここはつまりクリア後の世界のようだ。
「眼鏡は、たしかに眼福ものだったわ」
ブツブツと怪しげなひとりごとを呟くアンジェリーナに、「アンジェリーナ様?」とララが訝しげに声をかけてくる。
「でも、猫耳はビクター様のイメージではないわね。かといって、スチュアート様もちょっと、いや大分違うし」
ゲームの中のスチュアートが、『なんだよこれ? しょうがないなあ、ちょっとだけだぞ』と言いながら猫耳カチューシャを付けていたのを覚えている。
あのときは連打で画面を早送りして済ませたが、今なら蹴り上げていたかもしれない。
「猫耳カチューシャが一番似合うのはやっぱり――」
アンジェリーナは、ふと体の動きを止めると、浅い呼吸を繰り返した。
(エリーゼ……!)
エリーゼの猫耳姿を想像するなり、気持ちが昂り、あっという間に視界が開けていく。世界が、まるで星屑を散りばめたようにキラキラと輝いて見えた。
アンジェリーナは、完全に目が覚めてしまった。
危うく、恋という恐ろしい魔物に浸食されるところだった。
彼女には、前世からの根深い目標があったというのに。
(やらなければならないことがある)
――今すぐに、何を差し置いても、真っ先にやらなければならないことが。
輝くような瞳で前を見据えるアンジェリーナに、もう迷いはなかった。
たまらない既視感に襲われ、アンジェリーナは大急ぎでララの手からそれを受け取った。
「これって、猫耳カチューシャ……?」
そこで、頭の中で閃光が弾け、記憶が蘇る。先ほどビクターがかけていた眼鏡に、そして猫耳カチューシャ。
(たしか、『王子と乙女のセレナーデ』のプレイ終了後に貰えるご褒美アイテムだわ)
眼鏡または猫耳カチューシャを攻略キャラにプレゼントして、レアなスチルを楽しむためのイベントだ。
ビクターが眼鏡を持っていて、部屋に猫耳カチューシャがあるということは、ここはつまりクリア後の世界のようだ。
「眼鏡は、たしかに眼福ものだったわ」
ブツブツと怪しげなひとりごとを呟くアンジェリーナに、「アンジェリーナ様?」とララが訝しげに声をかけてくる。
「でも、猫耳はビクター様のイメージではないわね。かといって、スチュアート様もちょっと、いや大分違うし」
ゲームの中のスチュアートが、『なんだよこれ? しょうがないなあ、ちょっとだけだぞ』と言いながら猫耳カチューシャを付けていたのを覚えている。
あのときは連打で画面を早送りして済ませたが、今なら蹴り上げていたかもしれない。
「猫耳カチューシャが一番似合うのはやっぱり――」
アンジェリーナは、ふと体の動きを止めると、浅い呼吸を繰り返した。
(エリーゼ……!)
エリーゼの猫耳姿を想像するなり、気持ちが昂り、あっという間に視界が開けていく。世界が、まるで星屑を散りばめたようにキラキラと輝いて見えた。
アンジェリーナは、完全に目が覚めてしまった。
危うく、恋という恐ろしい魔物に浸食されるところだった。
彼女には、前世からの根深い目標があったというのに。
(やらなければならないことがある)
――今すぐに、何を差し置いても、真っ先にやらなければならないことが。
輝くような瞳で前を見据えるアンジェリーナに、もう迷いはなかった。



