婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する

 まるで稲妻のような、厳しい声だった。スチュアートとエリーゼにまとわりついていたヤドカリたちが、一斉にいそいそと部屋の隅に避難するほどに。

「ですが、父上! 彼女は罪人ですよ!」

「罪人?」

 王が、片眉を上げる。

「調べはついている。彼女が犯した罪など、何ひとつない。女に入れあげ、お前が勝手にアンジェリーナのよからぬ噂を流し、罪人に仕立て上げたのではないか」

「く……っ」

 アンジェリーナにとってはどうでもよいことだが、意表をつかれたスチュアートの様子から察するに、王の言っていることは本当なのだろう。スチュアートは青ざめ、しぶしぶといった様子で剣を鞘に納めた。

「お言葉ですが、国王陛下」

 すると、床に膝をついたままのビクターが、静かに言葉挟んだ。

「アンジェリーナ様の無実を知りながら、なぜ今まで傍観されていたのです? 彼女が塔に幽閉されたことも、もちろんご存知だったのでしょう?」

 鋭い碧眼が、咎めるように王に向けられる。王はそんなビクターをしばらくの間見つめると、にわかに口角を上げた。