婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する

 アッサラーン王国の王子というこれ以上ない身分に生まれ、容姿にも秀でていたスチュアートは、まるで宝石のように扱われ大事に育てられた。どこに行っても羨望の眼差しを浴びてきたし、女だってひと目見れば誰もが彼に恋をした。

 それなのにこの女は、スチュアートのプライドをことごとくズタズタにしてくれた。彼女に対する感情はもう、憎しみ以外残されていない。

「うまくいきましたわね」

 コツコツと靴音を響かせ、背後からエリーゼが近づいてきた。

「それにしても、この服は何ですの? まるで囚人服のようですわ」

 エリーゼがクスクスと笑えば、奇妙な服を着たアンジェリーナが目を閉じたまま「エリーゼ……」と彼女の名を呼ぶ。

 続いてにんまりと微笑まれ、エリーゼは一瞬ゾッとした顔を見せたものの、再びアンジェリーナがむにゃむにゃと眠りに落ちていったのを見てホッと息を吐いた。どうやら寝言だったらしい。

 エリーゼはこのところ、スチュアートの前でも素の自分を隠さなくなっていた。どうやら彼女もアンジェリーナを憎むあまり、心の均衡が保てなくなったらしい。

 春風のように清楚で無垢な村娘だったのが嘘のような変わりぶりだが、アンジェリーナを亡き者にしたいという利害が一致している今、スチュアートには返って好都合だった。

 エリーゼが男を誘っているのを目撃してから、彼女に対する愛情は失せたが、パートナーとしては申し分ない。

 そう、スチュアートは今から、アンジェリーナを葬り去るつもりだった。

 一生の幽閉など生ぬるい。それどころかこの悪女は、自分をないがしろにして恋人とともに平穏に暮らしている始末。

 スチュアートをとことんまで侮辱した罪人には、より重い罰が与えられるべきであると考えている。

 それはつまり、彼女の死だ。

(殺す前に、私をないがしろにしたことを必ず後悔させてやる)

 アンジェリーナが泣きわめき、スチュアートの言いなりになるさまを思い浮かべれば、愉悦で口もとが歪んでしまう。