「割れてしまったようですね。ちょうどよかったです。俺は、その絵をひどく不快に思っていましたので」
聞き覚えのある声が降ってきた。見れば、ランプを手にしたビクターが立っている。どうやらアンジェリ―ナは、部屋を出るなり彼にぶつかってしまったようだ。
「ビクター様……」
今彼に会うのは、なぜか気まずかった。
アンジェリ―ナは黙ってしゃがむと、亀裂の入ったその絵を拾う。すると、ビクターがその絵をアンジェリ―ナの手から奪い去り、まっぷたつに折り曲げた。
「その絵は、もう飾れないでしょう? 俺が燃やしてきますよ」
行動とは裏腹に、アンジェリ―ナに掛ける声はひどく優しい。
アンジェリ―ナは暗がりの中で、久々にビクターをまじまじと見つめた。
ガラス玉のように澄んだ切れ長のブルーの瞳に、筋の通った鼻筋、なめらかな肌。背が高く、細身なのに隆々とした筋肉を持つ彼は、アッサラーン王国でも屈指の騎士で、国民からの支持も熱かったと聞く。
そんな彼が、こんな場所にいるのを、今更のように気の毒に感じる。
聞き覚えのある声が降ってきた。見れば、ランプを手にしたビクターが立っている。どうやらアンジェリ―ナは、部屋を出るなり彼にぶつかってしまったようだ。
「ビクター様……」
今彼に会うのは、なぜか気まずかった。
アンジェリ―ナは黙ってしゃがむと、亀裂の入ったその絵を拾う。すると、ビクターがその絵をアンジェリ―ナの手から奪い去り、まっぷたつに折り曲げた。
「その絵は、もう飾れないでしょう? 俺が燃やしてきますよ」
行動とは裏腹に、アンジェリ―ナに掛ける声はひどく優しい。
アンジェリ―ナは暗がりの中で、久々にビクターをまじまじと見つめた。
ガラス玉のように澄んだ切れ長のブルーの瞳に、筋の通った鼻筋、なめらかな肌。背が高く、細身なのに隆々とした筋肉を持つ彼は、アッサラーン王国でも屈指の騎士で、国民からの支持も熱かったと聞く。
そんな彼が、こんな場所にいるのを、今更のように気の毒に感じる。



