婚約破棄された悪役令嬢は、気ままな人生を謳歌する

 ※
 翌朝。アンジェリ―ナは、エリーゼのいなくなった六階の部屋に、呆然と佇んでいた。

「エリーゼ様、急にいなくなってしまわれたわ……」

「夜中にバタバタと騒々しくなったと思ったら、従者を連れて大慌てで出て行かれましたよ」

 シュンと肩を落とすアンジェリ―ナの脇で、ララが言う。

(うまいこと言って、あと数日滞在してもらおうと企んでいたのに)

 アンジェリ―ナはすっかりしょげながら、階段を降りた。五階に降りたところで、ふと扉が開け放たれたままの部屋に気づいた。

 ララとビクターにバレてからというもの、鍵をかけなくなったエリーゼのコレクション部屋だ。

(もしかしたらエリーゼ様、ここをご覧になられたのかしら?)

 人は、見るなと言われれば見たくなるものらしい。ララとビクターの一件でそれを学んだアンジェリ―ナは、見てもいいわよという期待を込めて、エリーゼに『ここには、絶対に入ってはなりません』と告げた。

 アンジェリ―ナのエリーゼへの熱い想いが伝わることを願って。あわよくば、これを機に、親友になれればと企んでいた。

 だが、結果としてエリーゼが逃げ出してしまったということは、うまくいかなかったらしい。

 心にぽっかり穴が開いたような気持ちになりながら、ランプ片手に部屋に足を踏み入れる。

 入り口のすぐ脇には、先日仕上げたばかりのとっておきの妄想スチル――『エリーゼとトーマスの新婚生活』が飾られていた。こういったお遊び的なスチルも、ときには盛り上がるのだ。

「いつ見ても、最高傑作ね」