私は武者温子。

飲み会の帰りに駅まで小田周一と歩いた。

幾度となく告白を繰り返し伝えていたが

彼には幼なじみの彼女岸本良菜がいた。

良い返事は期待できないとわかっていても

私の想いはなかなかあきらめがつかないでいた。

「アッコ先輩、俺はアイツに本気だから。」

「私もあなたに本気なのよ。」

「俺はアッコ先輩のように完璧ないい女でなく、同類のアイツじゃないとダメなんだ。悪いけど。」

「わかったわ。」

「すまない。」

「その代わり、最後に私のわがままをきいてくれないかしら?」

「わがままって?」

「たいしたことないわ。キスしてほしいの。」

「キス?どこに?」

「どこでもいい。あなたの思うところでいいわ。」

「わかった。」

周一はそっと私の頭のてっぺんにキスを落とした。

それは軽くてふんわりとした髪に触れたか触れないかくらいのものだ。

「ありがとう。」

私は周一を見上げてしっかりと彼の目を見て言った。

「もう飲み会には誘わないでね。私だってやっぱり気持ちの整理に時間がほしいから。」

「わかった。」

私は彼に精一杯の笑みを向けたが

悲しみがにじんでしまうのは仕方がないと思った。