翌日。

 いつものように仕事にやって来た悠。


 資料室の前を通りかかったとき、ガタッと物音がした。

 
 大きめの音で、何かあったのかと思った悠は資料室のドアを開けてみた。


「所長…」


 声が聞こえた。

 ふと見ると、床に資料が落ちていて…その先で、一樹と女子社員・駒枝京香(こまえだ・きょうか)28歳が抱き合っている姿が目に入った。

 容姿端麗で、綺麗系の京香と大人の魅力がありとても色っぽい。
 長い黒髪にウェーブをかけ、男を魅了する雰囲気の女性である京香は、一樹に好意を寄せていると噂している社員もいる。

 弁護士を目指していて、司法試験にまだ合格していないパラリンガールでもある京香。

 そんな京香と一樹が抱き合っているのを見てしまい、驚いた悠は2人を凝視してしまった。


「ん? 」

 京香は悠に気づいた。

 目と目が合ってしまい、悠は慌てて資料室を出て行った。


 バタンと、ドアの締まる音がして、一樹はハッと振り向いた。


「所長、見られちゃったみたいですよ」

「はぁ? 」

「末森君に」

「え? 」

 驚く一樹に、色っぽく笑いを浮かべる京香。

「別にいいじゃないですか、末森君は男性ですから。嫉妬したりしませんよ」


 まさか…一番見られたくない人に見られてしまった…。

 一樹はとても焦った目をしていた。




 その後、一樹はずっと外出していた為、悠と会わないまま一日が過ぎてしまった。



 悠は仕事に集中して、京香と一樹の事を考えないようにしていた。

 
 19時まで仕事して、帰宅する悠。


 夕飯はコンビニでおにぎりと、ちょっとした総菜を買って帰宅した。


 帰宅途中。


 悠はまたあの公園の大木へとやってきて、てっぺんに登った。


 スーッと飛んでゆくように登ってゆく悠。



 てんぺんまでは、誰も来ることがない、どんな顔をしていても誰も見る事はない。