聞き覚えのある声。 そしてこの時代であたしをこの名前で呼ぶ人は、ひとりしかいない。 あたしが思うよりも先に、涙腺がその人が誰なのかを理解した。 瞬きもできずに見開いた目から、涙があふれ、頬を伝っていく。 涙を拭くのも忘れて、その声を反芻する。 弥生、弥生、弥生…… 緊張で体がうまく動かなくて、あたしはスローモーションみたいにゆっくりと、少しずつ振り向いた。