あたしが何か答える必要はもうなかった。 向井さんは小さな声で、決まり悪そうに嘘だと自分で暴露して、あれやこれや思い出を語り続けている。 いつの間にか、あたしは向井さんの頭をまるで子守りでもしてるみたいに撫でていた。 自分が向井さんのお母さんになったつもりでとか、そんなんじゃなくて、なぜだか自分でもよくわからないけど、そうしたいと思った。 ふと、向井さんの表情が変わった。 『あたし』と目が合った。