「山根えっ!待っでろ今行っがんな!」 阿久津さんが流れに乗って筏に向かった。 昇さんがその背中に叫んだ。 「阿久津!頼む!俺は岸につき次第、川下に向かう!」 阿久津さんからの返事はなかった。 だけど出来ることは限られている。 阿久津さんが追い付けなかったら、昇さんが陸から追いかけて筏を捕まえる。 それもできなかったら… ううん! 今はそんなこと考えない! 陸まであと2mくらい。 くっ、と唇を噛みしめる。 怖い、怖いけど…っ!